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僕の心はどこから来たのか。
僕の心はどこへ行くのか。
そんな疑問を最近持ち続けていた。
この問題は誰にも尋ねられなかった。
それでも密かに期待していた。
いつか誰かが僕の疑問に答えてくれる。
いつか何かが僕に答えを見せてくれる。
初めてその記号と出会ったのは電卓の上だった。
誤り、その記号のボタンを押した。
八桁の画面を埋める数、壊したのかと慌てて消した。
心電図の一部のようなその記号が何なのか知ったのは中学生になってから。
自分の頭が数学向きでないことに気付き始めた頃だった。
僕はその記号が好きだった。
小数点以下無限、いくら計算しても割り切れない数。
数字として書けばどこまでも続く、人知が及ばない数がそこにある。
そしてその数をかけ合わせるだけで、綺麗な整数になる。
あの頃はそれが何とも気持ち良かった。
僕はその記号が好きだった。
呼び名の由来は根源(ルーツ)だという。
数字を素数のかけ算に直す素因数分解、それは数のルーツを求める作業。
それがそれだけ難しくても、こなせばきちんと求められる。
今思えばそれが何とも羨ましい。
その記号は教えてくれるだろうか僕の心を生んだ源を。
その記号は見せてくれるだろうか僕の心が辿った道を。
その記号は正してくれるだろうか僕の心が犯した罪を。
もしできるのならば教えてくれよ、僕の心を明かす“√”。
僕の心は何故ここにいるんだ? そんなつもりは全くなかったのに。
僕の心はどこで道を間違えたんだ? しっかり地図は見てきたはずなのに。
他は駄目でもこれだけは答えて欲しい、僕の心を裁く“√”。
僕はどうすればいい? もう一度全てをやり直す為には。
あとがき
この詩も『髪結いの亭主』と同じく櫻田さんのサイトにある100のお題の1つ。ある日、櫻田さんと書きたいものが被ってしまい、『√』対決をしようと言うことになって書いたものです。櫻田さんは“禁断の恋”をテーマにした小説を書いてましたね。 |
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